2018年04月04日
民法の相続分野の大幅な改正が約40年ぶりに行われる見込みとなりました

 遺産分割における配偶者の保護や、遺言作成の利便性向上・遺言をめぐるトラブルの防止を主な柱とする民法改正案の要綱の取りまとめが終わり、今国会にて関連法案が提出されました。

 以下、改正案の主要部分の概要をご説明いたします。

 1 配偶者の居住の保護

 高齢化が進む中で、残された配偶者の生活を保護するための規定が新たに新設されます。

 ・配偶者短期居住権の創設

 改正案では、被相続人の配偶者がそれまで住んでいた住居が、遺産分割の対象となる場合、少なくとも遺産分割が終わるまでの間、配偶者に、当該住居を無償で使用する権利を与えることとされています。

 また、遺言や遺贈等により、相続の開始時点で当該住居が配偶者以外の者の所有となった場合であっても、少なくとも6か月間、配偶者に、当該建物を無償で使用する権利を与えることとされています。

 ・配偶者居住権の創設

 配偶者は、現在民法の下でも、それまで住んでいた住居の所有権を遺産分割等により取得すれば、そのまま住み続けることが可能ですが、住居の評価額が高額である場合、その分だけ預貯金や現金の取り分が少なくなってしまう可能性がありました。

 改正案で新設された配偶者居住権を取得すれば、配偶者は、当該住居を譲渡することはできませんが、その分、評価額を押さえることができるため、当該住居に無償で住み続けながら、預貯金等の取り分を増やせる可能性が高まります。

 2 遺産分割制度

 遺産の計算方法においても、配偶者の保護が強化されます。

 ・持戻し免除の意思表示の推定

 現行民法903条では、相続人が、被相続人から遺贈や贈与を受けていた場合、原則として、その価額を考慮して、遺産の取り分が減らされる仕組みでしたが、20年以上連れ添った夫婦の一方が、配偶者に遺贈や贈与をした場合、原則として、遺産の取り分は減らされない仕組みに変更されます。

 3 遺言制度

 遺言をめぐるトラブルを予防し、遺言をより利用しやすくするための改正が行われます。

 (1)自筆証書遺言の方式緩和

 現行民法では、遺言者自身で遺言を作成する場合、全文を自筆で行う必要がありますが(968条)、改正案では、財産目録について、自筆で行わなくてもよいものとしました。当該改正により、パソコン等による遺言の作成も可能となり、遺言がより利用しやすいものとなります。

 (2)遺言書の保管制度の創設

 改正案では、作成した自筆証書遺言を法務局に預け、遺言者の死後に、第三者が遺言の内容の確認を行える制度が新設されます。当該制度を活用することにより、遺言者の死後、遺言書が所在不明になったり、遺言書が改ざんされたりするリスクが軽減されることになります。

 4 遺留分制度

 現行民法は、被相続人が贈与や遺贈等で遺産の分配を決めていたとしても、一定の範囲の相続人には、最低限の取り分(これを「遺留分」といいます。)を保障しています(1028条)。現行民法では、遺留分を請求した場合、現物返還が原則とされていますが(1031条)、受贈者・受遺者側の権利保障や、権利関係が複雑になることを防ぐため、改正案では、遺留分相当額の金銭の支払いを原則とし、金銭を直ちに準備できない受贈者・受遺者は支払猶予を得られる仕組みに変更されています。

 5 相続人以外の貢献の考慮

 現行民法では、相続人が被相続人の財産の維持や増加に特別の貢献をした場合について、その貢献分(これを「寄与分」といいます。)を遺産の取り分に反映させる制度をとっていますが(904条の2)、改正案では、このような特別の貢献について、相続人以外の親族にもその範囲を拡大し、「特別寄与料」の請求ができるものとされています。

 改正案では、以上のほかにも、様々な規定の修正や創設が予定されています。